理学療法士トレーナーのタツです。
2009年〜理学療法士(整形外科分野)、2012年〜理学療法士&パーソナルトレーナーをしています。
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はじめに
野球肘は、特に成長期の子どもや中高生のピッチャーに多く発生するスポーツ障害です。
放置すると、肘の変形や将来的な競技継続に支障をきたすこともあるため、早期発見と適切な治療が重要です。
この記事では、野球肘のメカニズムから症状、原因、治療法、さらに理学療法士の視点からオススメのリハビリ方法までを詳しく解説します。
野球肘とは?|肘への過度な負担が引き起こす成長期の障害
野球肘(やきゅうひじ)は、投球動作を繰り返すことで肘関節に過度なストレスがかかり、関節や骨、靱帯に損傷が生じるスポーツ障害です。
医学的には「上腕骨内側上顆障害」や「離断性骨軟骨炎」などの名称で分類されることもあります。
特に注意が必要なのは成長期の骨が未熟な中学生以下の選手で、骨端線(成長線)に負担がかかりやすく、損傷リスクが高まります。
野球肘の主な症状
症状は肘の内側、外側、後方のいずれかに現れ、障害部位によって分類されます。
タイプ | 部位 | 主な症状 |
---|---|---|
内側型 | 上腕骨内側上顆 | 投球時の内側痛、圧痛、可動域制限 |
外側型 | 上腕骨小頭 | 投球時の外側痛、関節ネズミ(遊離体)の発生 |
後方型 | 肘頭 | フォロースルー時の後方痛、ロッキング感 |
※痛みだけでなく、肘が「伸びない」「曲がらない」といった機能障害も見逃せないサインです。
野球肘の原因|“繰り返しの投球”が最大のリスク
1. 投球フォームの問題
体幹や下半身をうまく使えず、腕だけで投げることで肘に集中して負担がかかります。
2. 投球過多
1日100球以上の投球や連投は、疲労蓄積によって障害リスクを高めます。
3. 柔軟性や筋力の低下
肩甲骨周囲や股関節の可動域制限により、代償的に肘へ負荷がかかりやすくなります。
野球肘の治療法|保存療法が基本。症状に応じた対応が重要
1. 安静(投球中止)
痛みが出ている間は最低でも2~3週間の投球禁止が基本。炎症を悪化させないことが最優先です。
2. 理学療法(リハビリ)
痛みの軽減後は、フォーム改善や柔軟性の向上、筋力強化を目的としたリハビリを開始します。
3. 装具療法
場合によってはエルボーブレースなどを使用して肘の可動制限を行うことがあります。
4. 手術療法(重症例)
軟骨や骨の剥離(離断性骨軟骨炎)や関節遊離体(関節ねずみ)がある場合は、関節鏡下手術が行われることもあります。
自宅でできる!理学療法士が推奨する野球肘リハビリメニュー
メニュー | 方法 | 目的 |
---|---|---|
肩甲骨エクササイズ | チューブを使ったローイングやY・T・W運動 | 投球動作の安定化 |
前腕屈筋群のストレッチ | 手のひらを下にして肘を伸ばし、手首を反らせる | 内側部の緊張緩和 |
股関節・体幹トレーニング | ブリッジやプランク、ヒップリフトなど | 全身連動性の向上 |
投球フォーム修正 | 専門家と動画分析し、下半身主導に修正 | 再発予防に必須 |
※いずれも痛みのない範囲で実施し、症状の経過を見ながら段階的に進めます。
野球肘予防のポイント|指導者・保護者ができるサポートとは
- 1日の投球数・登板数の管理(目安:小学生70球/日、中学生100球/日)
- 適切なウォーミングアップとクールダウン
- 投球後のアイシングとストレッチ
- 痛みを我慢せず、すぐに報告する習慣作り
- オフシーズンの導入(投げない期間の設定)
まとめ|野球肘は早期発見・早期治療が野球人生を守る
野球肘は、「まだ大丈夫」、「すぐ治るだろう」と放置されがちですが、初期対応を誤ると慢性化や変形を起こすリスクが高まります。
理学療法士の視点からも、“肘”だけを見るのではなく、“全身の動き”を評価することが極めて重要です。
子どもの未来の野球人生を守るためにも、痛みの早期発見・早期対応と、正しいリハビリ・予防法の実践がカギになります。
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