理学療法士トレーナーのタツです。
2009年〜理学療法士(整形外科分野)、2012年〜理学療法士&パーソナルトレーナーをしています。
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はじめに
高齢者の中には、「食欲はあるのに食べられない」、「食べたいけれど飲み込みづらい」、「食べたいけど食欲がない」といった悩みを抱えている方が少なくありません。
こうした状態が続くと、栄養不足や筋力低下を招き、要介護リスクが高まります。
この記事では、理学療法士の視点から「食べられない原因」を科学的に分析し、安全かつ効果的に栄養を摂取するための具体的な対応策をご紹介します。
高齢者が「食べたくても食べられない」原因とは?
嚥下機能の低下(サルコペニア嚥下)
加齢やサルコペニア(筋肉減少症)によって、舌や喉の筋力が低下すると、食べ物をうまく飲み込めなくなります。
これは「サルコペニア嚥下」とも呼ばれ、誤嚥性肺炎の原因にもなります。
咀嚼力の低下と歯科的問題
入れ歯が合わない、歯が抜けている、顎の筋力低下などが影響し、硬い食材を避けるようになり、食事量が自然と減ってしまうケースが多いです。
消化機能の低下
消化液の分泌が減少することで、消化不良を起こしやすくなり、食後に腹部不快感を覚えるため、食欲低下につながることがあります。
薬剤の副作用
降圧薬や抗うつ薬などの副作用として、口渇や味覚異常、食欲不振が起こることもあります。
食べられない問題がもたらすリスクとは?
「食べたくても食べられない」状態が続くと、次のような健康リスクがあります。
- 低栄養(マルニュートリション)
- フレイル(虚弱)やサルコペニアの進行
- 免疫機能の低下による感染症リスクの上昇
- 褥瘡(床ずれ)や創傷治癒の遅延
- 日常生活動作(ADL)の著しい低下
対応策①:嚥下機能をサポートするリハビリテーション
理学療法士や言語聴覚士と連携して行う「嚥下訓練」は、安全に食べる力を取り戻す第一歩です。
- シャキア訓練(Shaker exercise):頸部の筋肉を鍛えて嚥下力を向上
- 舌の可動域訓練:舌圧を高めることで飲み込みやすくする
- 口腔ケア:誤嚥性肺炎を予防し、口腔環境を整える
対応策②:栄養補給の工夫と段階的な食事形態
日本摂食嚥下リハ学会では、嚥下機能に応じた「食事形態の分類(コード0〜5)」を提唱しています。
コード | 食事形態の例 |
---|---|
0〜1 | とろみ付き飲料、ゼリー状食品 |
2〜3 | ムース状、ペースト状食品 |
4〜5 | やわらか食、キザミ食 |
また、高カロリー・高たんぱくの補助食品(栄養補助飲料、エネルギーゼリーなど)を使って不足を補うことも有効です。
対応策③:環境・心理的アプローチの重要性
食欲を促進するには、以下のような環境改善も重要です。
- 彩りのよい食事で視覚からの刺激を与える
- 家族や介護者との会話を取り入れ、食事を「楽しみ」にする
- 適切な食事時間・姿勢(90度座位)を保つ
まとめ:高齢者が食事できる工夫を
高齢者の「食べたくても食べられない」状態は、放置すると深刻な健康問題を招く可能性があります。
理学療法士の立場から、次のような対応を提案します。
- ✅ 嚥下機能の低下は訓練で改善可能。嚥下リハビリを積極的に取り入れる
- ✅ 食形態の工夫と栄養補助食品で無理なくカロリー・タンパク質を補給する
- ✅ 食環境の改善や心理的サポートも食欲促進には不可欠
- ✅ 必要に応じて多職種(歯科医、言語聴覚士、栄養士)との連携を図る
まずは日々の食事で「無理なく・安全に・楽しく」食べられる工夫をはじめてみましょう。
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