理学療法士トレーナーのタツです。
「筋トレ=筋肉を鍛えるもの」というイメージがありますが、実は全身の健康を支える“ホルモン様物質”を分泌する行為であることが、近年の研究で明らかになってきました。
そのキーワードが「マイオカイン(myokine)」です。
本記事では、理学療法士の視点から、筋トレが分泌を促すマイオカインの役割と、その健康効果、さらに筋トレの実践法まで詳しく解説します。
マイオカインとは?【筋肉が分泌する健康ホルモン】
マイオカインとは、骨格筋が収縮するときに分泌されるサイトカイン(生理活性物質)の総称です。
2007年にペデルセン教授(デンマーク)により提唱され、現在では40種類以上が報告されています。
主なマイオカインとその働き
マイオカイン名 | 主な作用 |
---|---|
IL-6(インターロイキン6) | 抗炎症作用、脂肪燃焼促進、免疫調整 |
BDNF(脳由来神経栄養因子) | 脳の可塑性向上、うつ病リスク軽減 |
Irisin(アイリシン) | 褐色脂肪化、代謝促進、抗肥満効果 |
Myostatin(ミオスタチン) | 筋肉成長の抑制(※筋肥大には抑制されるべき) |
筋肉は「運動器」だけでなく、「内分泌器官」としての働きがあることがわかってきています。
マイオカインがもたらす健康効果【科学的エビデンス】
1. 炎症の抑制と免疫力の向上
- IL-6は、筋肉から出るときは抗炎症作用を持ち、慢性炎症を抑える働きがある
- これにより、動脈硬化・糖尿病・がん・認知症のリスクを低下
2. 脳機能の改善
- BDNFは神経細胞の成長・再生に関与
- 有酸素運動と筋トレによってうつ症状の緩和、認知機能の向上が報告されている
例:Erickson KI et al., 2011 – ウォーキング習慣で海馬の体積が増加し、記憶力が改善
3. 代謝改善と肥満予防
- Irisinにより、白色脂肪細胞が褐色脂肪様に変化(脂肪を「燃やす」細胞に)
- 結果、基礎代謝の向上・脂肪燃焼の促進が起こる
理学療法士が注目する筋トレとマイオカインの関係
リハビリ現場では、筋トレを単なる筋肥大だけでなく、健康維持・回復の治療法として導入しています。
高齢者にとっての効果
- サルコペニア(加齢による筋肉減少)に対してマイオカインが抗炎症作用を発揮
- 転倒予防、認知機能低下予防にも貢献
生活習慣病の管理
- 糖尿病患者において、筋トレでインスリン感受性の改善(マイオカインが介在)
- 心疾患・脂質異常症にも有効な非薬物療法とされている
健康維持に効果的な筋トレメニュー
マイオカインを効率よく分泌させるには、大筋群をしっかり刺激する筋トレが推奨されます。
週に2〜3回、以下の種目を中心に
種目 | 主に使う筋肉 | 備考 |
---|---|---|
スクワット | 大腿四頭筋・ハムストリングス・臀筋 | 下半身全体を強化 |
デッドリフト | 背筋・臀部・もも裏 | 正しいフォームが重要 |
プッシュアップ(腕立て) | 胸・三頭筋・体幹 | 負荷調整がしやすい |
ランジ | 下半身+バランス力向上 | 体幹の安定性もアップ |
プランク | 体幹全体 | 内臓脂肪にもアプローチ |
それぞれ10〜15回×2〜3セットを目安にし、徐々に負荷を上げることがポイントです。
よくある質問(Q&A)
Q:筋トレをしていればマイオカインは自動的に出る?
A:適切な負荷と継続性があってこそ、分泌が促進されます。
また、栄養(特にタンパク質)や睡眠もマイオカインの作用を支える重要な要素です。
Q:有酸素運動でもマイオカインは出る?
A:はい、特にBDNFやIL-6は有酸素運動でも分泌されます。
しかし、筋トレの方が多様なマイオカインを効率よく分泌できると報告されています。
まとめ:筋トレで健康ホルモン、マイオカインを分泌
- マイオカインは、筋肉から分泌されるホルモン様物質で、全身の健康に関与
- 筋トレにより、炎症抑制・代謝改善・脳機能向上・免疫強化が期待される
- 健康維持のためにも、週2回以上の筋トレを習慣化することが望ましい
筋トレは「見た目」だけでなく、「内臓・脳・代謝」まで変える全身医療。
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