理学療法士トレーナーのタツです。
「歩くと膝が痛い」、「階段の上り下りがつらい」
そんな症状があるなら、それは変形性膝関節症のサインかもしれません。
放置すれば進行し、歩行困難や生活の質(QOL)の低下につながります。
この記事では、理学療法士の視点から、変形性膝関節症のメカニズム・症状・進行ステージ・効果的なリハビリ運動メニューまでをわかりやすく解説。
科学的根拠に基づいた情報で、あなたの膝の健康を守るための第一歩をサポートします。
変形性膝関節症とは?【病態と原因】
変形性膝関節症(Osteoarthritis of the Knee)とは、膝関節の軟骨がすり減り、骨同士が接触して痛みや変形を引き起こす疾患です。
中高年以降に多く、特に女性に多い傾向があります。
変形性膝関節症の主な原因
原因 | 説明 |
---|---|
加齢 | 加齢により関節軟骨が摩耗しやすくなる |
肥満 | 体重増加により膝への負荷が増す |
筋力低下 | 特に大腿四頭筋の筋力低下が膝関節の不安定性を招く |
O脚・X脚 | 膝にかかる荷重が偏り、特定の軟骨が摩耗しやすくなる |
スポーツや労働 | 長期間の負荷が蓄積して発症することもある |
変形性膝関節症の症状と進行段階
ステージ | 主な症状 | 特徴 |
---|---|---|
軽度 | 運動時の違和感・こわばり | 朝や動き始めに出やすい |
中等度 | 歩行時や階段昇降での痛み | 関節の腫れ、熱感を伴うことも |
重度 | 安静時にも痛み、関節の変形 | 膝の可動域制限、歩行困難 |
※レントゲン画像では、関節裂隙(関節の隙間)の狭小化や骨棘(こつきょく)形成が確認されます。
※骨棘👉骨のトゲのようなもの
膝の痛みの仕組み【科学的背景】
痛みは主に以下の構造物が関与しています。
- 滑膜の炎症:関節内に存在する滑膜が炎症を起こすことで痛み物質が放出される
- 関節包・靱帯の過緊張:姿勢や動作のクセで周囲組織が引き伸ばされて痛みを誘発
- 筋肉の過緊張や萎縮:特に大腿四頭筋や内転筋群の機能低下が膝の不安定性を助長
変形性膝関節症の治療法の選択肢
保存療法(手術以外)
- 薬物療法:鎮痛薬やヒアルロン酸注射など
- 物理療法:温熱・電気療法で血流改善と鎮痛を図る
- 理学療法(リハビリ):運動療法と姿勢・動作指導が中心
手術療法
- 人工膝関節置換術(重度の場合)
- 関節鏡手術(骨片や炎症部位の除去)
理学療法士がすすめる!変形性膝関節症に効果的なリハビリ運動メニュー
※すべての運動は痛みがない範囲で無理なく行うことが大原則です。
1. 大腿四頭筋の強化(膝を支える最重要筋)
セッティングエクササイズ(膝伸展訓練)
- 仰向けに寝て膝の下にタオルを置く
- 膝を伸ばすようにタオルを押しつぶす
- 太ももに力を入れて5秒キープ ×10回を1日3セット
2. ヒップアブダクション(股関節外転筋)
- 横向きに寝て上側の足をまっすぐ持ち上げる(自分の身体よりも前側に上がらなように注意)
- お尻の横に刺激が入るのを意識
- 左右10回×3セット
3. ブリッジ(臀筋・体幹の協調性)
- 仰向けで膝を立てて寝る
- お尻に力を入れてゆっくり持ち上げる(膝・骨盤・肩が一直線になるように)
- 5秒キープ ×10回×3セット
4. スクワット(軽度屈伸)
- 肩幅より少し広めに足を広げて立ち、30°程度までゆっくり膝を曲げる
- 膝がつま先より前に出ないようにして、膝が内側を向かないように注意
- 10回×2〜3セット(痛みが出ない範囲で)
5. 立位での重心移動(荷重訓練)
- 両足で立ち、ゆっくりと左右の足に体重を移す
- 重心のバランスを鍛える
6. ストレッチ(膝&股関節)
・ハムストリングス(もも裏)のストレッチ

・ふくらはぎのストレッチ(アキレス腱伸ばし)
・大腿四頭筋(もも前)のストレッチ(痛みがなければ)
変形性膝関節症の方が日常生活で気を付けるべきこと【生活指導】
注意点 | 理由 |
---|---|
階段はできるだけ避ける | 膝への負荷が大きいため |
正座を控える | 屈曲時の関節圧が増す |
長時間の立ちっぱなしを避ける | 血流が滞り、炎症が悪化しやすい |
適正体重を維持する | 体重1kg増えるごとに膝への負荷は約3kg増える |
【理学療法士のアドバイス】
無理な減量ではなく、バランスの良い食事と定期的な運動で体重コントロールを行いましょう。
現在の体重の10%程度減量すると効果的ですが、あくまでも健康的に減量しましょう。
健康的に減量する方法をこの記事の最後に載せておきます👇
よくある質問(Q&A)
Q:変形性膝関節症の運動は毎日やってもいい?
A:基本的にはOKですが、痛みが出た場合は中止してください。リハビリの目的は「鍛える」よりも「動かして血流を良くする」こと。1日5分でも継続が大切です。
Q:湿布やサポーターは効果ある?
A:一時的な症状緩和には効果的です。ただし、根本的な改善には運動療法が必要です。
まとめ:変形性膝関節症の痛みとリハビリについて
- 変形性膝関節症は、関節軟骨の摩耗により痛みや変形が進行する疾患
- 加齢・肥満・筋力低下・姿勢不良などが主な原因
- リハビリでは、大腿四頭筋や股関節周囲筋のトレーニングが重要
- 正しい運動と日常生活での工夫で進行を予防できる
「痛みがあるから動かさない」は逆効果です。
理学療法士の指導のもと、正しい運動と生活習慣の見直しで膝を守ることが可能です。
少しずつでもいいので、まずは膝を動かす習慣をつけていきましょう。
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